コラム

見えないところで働く根

 今回は根の話、根の働きは大きく3つ水の吸収、養分の吸収、樹体の保持等があげられる。根が養水分と吸収するのは根の先端の細根部からである。前回も述べたが水は光合成を行う上で大事である。

 また、樹木は光合成で必要とする水の100倍を葉から蒸散させる。(太陽がカンカン照りの時、車のボンネットは触れないくらい熱くなるが、どんなに気温が上がった時でも葉は触ることができるのは蒸散作用のおかげ)つまり樹木はその樹体を維持するために大量の水を必要とし、その水は土壌から吸収している。

 また、細根で水を吸収するには、根の内皮細胞にある細胞壁のカスパリー線を通過しなければならない。ここでは水分量、窒素量、ミネラル量等の制限、病原菌等異物の侵入を阻む働きをする。しかし、この機能を果すには内皮細胞で多大なエネルギーを必要をする。そのエネルギーは呼吸によりATP(アデノシン三リン酸)を酸化させることで得ている。そして、その呼吸に必要な酵素は土壌水中に溶存する酵素を利用している。(土壌水中に含まれる酵素しか利用できない)

 つまり、水はけの悪い水が溜まっているような所に樹木を植えても育たないのは、酵素の解けていない水は吸収できず、根腐れを起こして枯れてしまうためである。

 樹木は水はけの良い、土が柔らかく空気が通る土を好むのはこのためである。

                                  

                          (株)旭川公園管理センター

                           樹木医 内田則彦

                                引用文献:樹木の水分吸収機能と森林の保水力  堀 大才