日も段々と長くなり、6月も半ばを過ぎると旭川でも「夏日」の日が時々訪れる。
人々にはビールのうまい季節となり、会社帰りが楽しみになる。樹木も新芽が吹き、葉の成長もひと段落、緑も濃くなってきた。
こんな時期に、幹全身に大量の葉でくるまれ防寒着をまとった樹木がいる。
(写真1)幹全身に胴芽が吹いた状態
この木はニセアカシア、街路樹としては優秀で生育も早いし、やせ地でも育ち、排気ガス等にも耐性があるため多く植栽された。
今は、外来種であるため生物多様性の観点から植栽を控えなければならない樹種となっている。
まったく人の都合で振り回され大変な目にあった樹木である。
街路樹として選ばれた管理上の理由として、剪定に耐え少々強く剪定しても枯れる事がないためである。
最近の街路樹の管理方針としては、葉が落ちて苦情が来る前に枝葉を強く剪定(強剪定)を行い、葉を残さない樹形を無視した
マッチ棒のような形にする事が多い。
枝葉が無いマッチ棒のような樹形では、春先に葉が吹いても樹冠頂部に少々出る程度で本来の樹形に葉がつける状況とは大きく違う。
(図1) 通常剪定 マッチ棒状の剪定
上記図のようにマッチ棒状では葉が少なく、本来の幹を保つための光合成を行う事が出来ない。
そこでニセアカシアは、休眠している胴芽を吹き、葉を沢山出すことで光合成量を補おうとする。
そのため(写真1)のような葉で覆われた状態となる。見るだけで「寒がりでコートを着たような樹木」となる。
このようにコートを着た街路樹が市内あちこちに見られる。
原因は強剪定を行ったため、しいては葉が落ちることに苦情を申し立てる人が多いことが最大の原因である。
樹木にとっても本来剪定を行うのに適した時期があるそのことを理解して剪定を行いたい。
樹木1本1本は、私たちの財産であることを忘れないでほしい。
落葉が家の前に落ちて困る。樹木にとって必要がなくなった葉は落葉させるのが自然の摂理で有り、リターとして
有機物となり一部は二酸化炭素として大気にもどりまた、植物(樹木)の光合成に利用される。
こんな完璧な持続可能なシステムを壊す必要はない、今はSDGsの世の中なのだから。
一般社団法人 日本樹木医会
樹木医登録番号 1860号
樹木医 内 田 則 彦